トレーニング事例 : 内製化支援

開発会社にシステム開発を委託するのではなく、社内でシステム開発・メンテナンスを行うことを内製化といいます。
ワークスペースは Claris FileMaker の内製化に向けたトレーニング、サポートなど支援を行っており、その事例をご紹介致します。

このプロジェクトのテーマは「内製化」。
開発した後のメンテナンスや日々の運用で生まれる改善課題を社内で対応したいという強い希望から始まりました。 内製化のために実施したトレーニングについて紹介します。

相談頂いたお客様は、経営・金融・税務・IT等の分野の専門家、様々な支援をコーディネーターによる無料相談窓口を開設している県の外郭団体様です。
新規取引・販路開拓の支援、創業者からの相談・交流・情報提供はじめ、様々な事業をしています。さまざまな事業をする中で、県内企業の受注先・発注先を探している企業、新たな仕事の受注を希望する企業同士結ぶことを目的とした「相談・あっせんシステム」の開発支援をしました。
システムの名前は「企業カルテ」です。

お客様は Microsoft Access で社内開発した「企業カルテ」システムを運用されていました。Access は Microsoft Office 製品の一つで、データを扱ったり、簡単なデータベースシステムを作るためのツールです。Excel 、 Word 、 PowerPoint といった広く使われているソフトウェア群とならぶデータ管理のためのデータベースシステムです。


当時、Accessで開発された「企業カルテ」は社内共有しているストレージに保存して利用していました。「企業カルテ」を利用したい人がそれぞれのPCからネットワークを経由してアクセスするため、時には同じ瞬間に同じ Accessファイルを開いてしまうことがあり、システムが破損しないか不安の毎日だったそうです。

そんな時、Claris inc.の「iPad と FileMaker を利用した業務システム作成体験無料セミナー」、通称「iOSハンズオンセミナー」を知りました。奇しくもお客様のオフィスとiOSハンズオンセミナー会場が同じ建物であったことから「一度、iOSハンズオンセミナーに参加して FileMaker に取り組んでみよう」と思われました。

FileMaker Server でホストしたファイルを FileMaker Pro から同時に接続してもファイルが破損しないことが魅力に感じたそうです。

iOSハンズオンセミナーに参加した後、FileMaker Pro シングルライセンスを購入したお客様は、自分なりにAccessで運用していたシステムをFileMaker に置き換えようとチャレンジします。
最初は FileMaker は Access と同じく開発し易く、着々と開発を進めることができました。

ところが、開発を進めるにつれ、基礎知識がない中で開発に対する迷いや相談できる相手がなく、つまずくことが多いことに気づきました。

やはり開発を専門家に頼るしかないのだろうか …



しかし、開発会社に開発を依頼するには、費用が掛かる。
それにシステムの変更や機能追加の都度、開発会社に依頼するのではさらに費用がかかってしまう。

と悩んでいたころ


Access の時とおなじく自分たちが開発知識を得れば開発も機能追加も、必要なときに必要なだけ自分たちの力で開発できるのではというアイデアが湧いてきました。
そこで、私の友人を伝って、当社に FileMaker の開発トレーニングの相談をしてゼロベースで FileMaker システムを開発することを決意しました。

この記事をご覧いただいている方の中には、Access も FileMaker も手軽に取り組めるデータベース開発環境という認識があるかもしれません。


少しAccess と FileMaker の違いについて説明します。

Access は Microsoft Office ソフトウェア群のひとつで、開発が容易なデータベースソフトウェアです。
作ったデータベースは FileMaker と同じように共有できますが、一般に Access ファイルを共有すると、信頼性・可用性・パフォーマンスの低下を招くと言われています。
こうした問題の解決には、データベースサーバー SQL Server との連携が必要で、SQL Server の習得・開発は時間もかかり独学での習得は難易度が高いと思います。


FileMaker は、レイアウト(Accessでいうフォーム)やスクリプト(Accessでいうマクロ)をデータベースと組み合わせた統合開発環境なので FileMaker Server や FileMaker cloud にカスタム Appを転送することで簡単に共有できます。

参考までに、今回のお客様のように社内で共有されているストレージ、共有のディスクに Access ファイルを保存して、開きたい人が任意で開くという使い方をすることが多いようですが、正しくは Access のクライアントの設定というメニューから共有というメニューを選択する手順で共有するのが正しい使い方です。FileMaker にも このAccessによる共有と似た ピアツーピア という共有方法がありますが、共有としての利用は推奨していません。FileMaker では FileMaker Server や FileMaker Cloud による共有を推奨していて、これこそが FileMaker を選択する強みです。Access には サーバーという製品がありません。

実施計画は今回のお客様の背景、スキル、ゴールをもとに立案したものです。
当社ではお客様の希望や要望によって異なる場合があるので、あくまで一例としてご覧ください。



 1. Claris FileMaker の基礎知識、開発手法、Access との違いについて説明
 2. 企業カルテの構造と開発経緯についてヒアリング
 3. 必要なテーブル・フィールドの洗い出し
 4. 開発するシステム単位で細分化、プロトタイプ(試作)を交えながら構造について解説
 5. 細分化したシステムを構築
 6. 1つのカスタム Appにまとめる
 7. 開発後のバージョンアップ、新機能開発時の対応



また、計画立案の際に次のようなことに注意しました。

FileMaker はノーコード・ローコードで組み立てられる開発し易いプラットフォームです。

ただしすべてしを習得するならば、複雑でその内容は多岐に渡ります。



また、FileMaker は1箇所を覚えただけでは習得に結びつきません。
言いかえれば、点としての習得は知識の向上で、点と点を繋いで線としての知識を得ること、すなわちが組み立てられるようにすることが FileMaker の本当の知識向上といえます。



内製化を目的としたトレーニングでは何をもってゴールとするかを明らかにし、そのゴールへ向けた知識、組み立て方を習得することが大切です。
この案件では「Accessシステムの再構築と共有化」「今後の機能向上に向けたデータベースシステムの整理」をゴールとして設定しました。


明確なゴール設定が重要です。

続いて「細部にわたり情報・知識を共有する」ということに注意をします。



FileMaker の開発者は開発のプロですが業務のプロではありません。

専門用語含め「こんなこと言わなくても分かってもらえる、言う必要がない」と思って進めてしまうと、トレーニング内容と業務の実態に合わないすれ違いが生じて結果的に遠回りすることがあります。



最低限、先にご説明した「ゴール設定」までの道のりに必要な情報・知識・言葉などは明確にすると良いでしょう。

もちろん、当社ではFileMaker の用語や技術についてトレーニングの中で伝えて相互理解を深めるようにしています。

こちらはお客様が開発し運用していた Access の「企業カルテ」システムです。
Access の画面やマニュアルをもとに、今現在、どのように運営されどのようにシステムを利用しているのか。用語や考え方などを詳しくヒアリングしました。

トレーニング計画を立案し、ワイヤーフレームとカリキュラムを作りました。
カリキュラムとワイヤーフレームは、ゴールへの道標(みちしるべ)となります。
これによりトレーニング受講者とお互いに進捗と内容が常に確認・共有できました。

実際のトレーニングで作ったモックアップです。
モックアップとは「外見だけ、それっぽく出来ています。中身は作ってないから動いたりはしないよ。見た目とかのイメージを確認するためだけに使ってください」といった試作品や模型のことです。

当社が実施するトレーニングや受託開発では、モックアップを使ってリアル感をもって相互理解を深めることが多いです。

留意すべくはモックアップは実際のシステムではない、ということ。
きちんとモックアップの意図を説明しないと、不十分なシステムという認識を取られてしまうことがあるので気をつけたいところです。

レイアウトのモックアップと同時に時々プロトタイプ(試作品)を作り、トレーニングに利用します。
プロトタイプとは「後での改良を見込んで、その仕事をする大筋として作る最初の模型」といった意味です。

このプロトタイプはスライドのように非常にシンプルな1レイアウト、1行のスクリプトで構成するものが多いです。
時々、より理解を導くために複数のレイアウトやリレーションと複数行のスクリプトで構成するものを作る場合もあります。

プロトタイプも、軸となる箇所もスクリプトなどを開発してトレーニングと組み合わせました。
こうして半年ほど開発・トレーニングのサイクルを繰り返しました。

ワイヤーフレームとカリキュラムにより、進めていったトレーニングはやがて完成を迎えます。
今回ご紹介しているトレーニングは、知識や技術の習得が目的ではなく、あるシステム、具体的には再構築された企業カルテシステムが完成し運用されるところまで導くことが必要です。

そこで、ここからは完成後の手順について解説します。

冒頭にも説明したデータを移行作業をしました。
繰り返しになりますが、データの移行自体は、何度も繰り返してする作業ではないのと開発速度を上げたいという理由からトレーニングを行うのではなくワークスペースが担当することにしました。

お客様に Access から企業カルテ システムのデータをExcel形式に変換したファイルを用意してもらいます。
当社で、Excel ファイルを一旦、FileMaker でインポートして、FileMaker 版の企業カルテ に移行できるよう並び替えや文字列の編集を行う カスタム App 開発をしました。



こうして FileMaker 版 企業カルテ は完成をしました。

開発後に オンプレミスの FileMaker Server をセットアップ、現在運用中です。
バックアップも万全で、複数台のPCで共有できる安全なシステムが完成しました。
Access の頃に共有ストレージでハラハラしながら運用していた仕組みとは違うとみなさん大満足です。

トレーニングが終了して1年以上が経ちますが、トレーニングによって得られた技術や知識をもとに現在進行形でさらなる機能追加・進化をして頂いています。

株式会社ワークスペースは、2002年以降多くのお客様に受託開発の形で FileMaker で構築したシステムをお届けしております。また、2008年以降、長期に亘り Claris inc. のパートナーとして数多くの経験がある当社だからこそ今回、このような事例紹介ができるのです。Access に限らず内製化をご検討の際は、ぜひ当社へご相談ください。

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