Representative Profile
岡田 匡
株式会社ワークスペース 代表取締役
ひとりで、ここまでやってきた話
第一章
会計事務所の所員、インターネットに賭ける
── 創業前は会計事務所にお勤めだったそうですね。
そうです。通常業務のかたわら、パソコンの管理も担っていました。数字を扱う毎日の中で、ある確信が芽生えていました。「これからインターネットの時代がやってくる」。会社経営への憧れと、時代の予感。その二つが重なったとき、一念発起して独立を決めました。1998年のことです。
── 独立直後の苦労はありましたか?
最初は仕事が全くなく、判断が合っていたのか正直自信をなくしかけた時期もありました。そんな中、インテリアの商材をEコマースで販売する方から相談を受けました。数千件にのぼる膨大なデータの中から消費者が希望の商品に辿り着ける検索システムが欲しいという依頼です。データベースも独学で、ネット検索でも技術情報が満足に得られない時代でした。それでもテキストデータをもとに検索・抽出する仕組みを作り上げて納めました。その仕事が評判を呼び、京都でアパレルのネット通販を手がける「京都の恩人」と出会うことになります。
第二章
「左うちわシステム」と、FileMakerとの出会い
── FileMakerとの出会いはどんなきっかけだったのですか?
2002年、京都の恩人から「大変なことになった」という相談が入りました。会社の従業員が突然退職することになった。その方の主な仕事は、ネット注文のデータをFileMakerに手作業で転記すること。毎日の基幹業務が止まりかけていました。
── そこでFileMakerを独学で習得されたわけですね。
ショッピングカートへの注文が入ると、注文データがCSV化されてメールに添付される。そのファイルを自動的にフォルダへ保存し、FileMakerが自動的にレコードをインポートする。さらに本日の発送データの作成、お客様への注文御礼メールの自動送信、送り状の印刷まで、一連の作業がすべて自動で流れていく仕組みを作り上げました。恩人はこのシステムに「左うちわシステム」と名前をつけ、たいそう喜んでくれました。これは今でいうDXそのもの。2002年のことです。
── 作り上げた時の手応えはいかがでしたか?
もちろん興奮しました。独学でしたから。この体験でFileMakerに可能性を感じ、2002年から開発の2本目の柱として本格的に取り組み始めました。「仕事に合わせたシステムを作る」というスタンスは、最初からずっと変わっていません。
第三章
法人化、炊き込みご飯、同じ釜の飯
── 2004年に法人化されています。
信頼していただけるお客様も増えてきて、きちんとした器を作ろうと有限会社ワークスペースを設立しました。拠点も岐阜県大垣市のソフトピアジャパンに移しました。インキュベートルームに格安で入居できること、そして自然豊かな岐阜への憧れがありました。「東京で勝負しないのか」という声もありましたが、都会は性に合わなかった(笑)。実はその前に、地元で駅前の10坪ほどの物件を見つけてカフェ併設の事務所を夢見たこともあったのですが、飲食不可で断念しました。
── 2008年には従業員が6名まで増えています。
職業訓練でWEB技術を学ぶ人をOJT形式で受け入れ、FileMakerの事業をともに育てたい人を次々と迎え入れました。残業が続く夜には、事務所の炊飯器で炊き込みご飯を作ってみんなで夜食を囲みました。「同じ釜の飯を食べたかった」という気持ちがありましたね。バーベキューも何度か企画しました。難しい仕事をしながらも、楽しい職場にしたかったんです。
第四章
縮小という、もう一つの勇気
── その後、会社は縮小していきます。
リーマンショックの後、予定していた仕事が減り業績が落ちました。若気の至りで打算的な経営をしていたことが裏目に出た、と今は反省しています。1人になったとき、電話が怖いと感じた時期すらありました。
── そこからどう立て直しましたか?
まずは縮小して、できることだけをするスタンスに変えました。そして気づいたことがありました。「お客様が自分でできるようになると、喜ばれる」。時間をかけて開発して納めるより、お客様自身の力を引き出す支援をする方が、はるかに価値があった。時代もちょうど内製化へと向かい始めていました。苦境が、今のビジネスモデルの原点になりました。
第五章
珈琲と、25年越しの夢
── カフェ事業部創設のきっかけを聞かせてください。
来客があるたびに珈琲を出してきました。せっかくなら本物を楽しんでほしいと、豆を挽き、水の種類を変え、やがて自分で焙煎するようになりました。「美味しいから買いたい」という声が上がり、ネット通販も始めました。そんなある日、学生時代の恩師に珈琲豆を届けたところ「伊勢神宮の内宮に珈琲豆を奉納しないか」という提案を受けました。「会社として奉納したらどうか」と。それが2023年のカフェ事業部創設のきっかけです。
── 2026年7月には名古屋に店舗をオープンされるとか。
2025年から毎月マルシェに出店してきました。そして2026年7月、名古屋市に珈琲豆とテイクアウトコーヒーの店をオープンします。20年以上前に断念した駅前カフェの夢が、形を変えて今まさに実現しようとしています。
エピローグ
良いものを、届けたい
FileMakerと珈琲。一見異なる二つの事業に、岡田は同じものを見ている。「お客様へ良いものをお届けしたい」という気持ちだ。
ワークスペースを知ったおかげで仕事の効率が上がった。珈琲を楽しむゆとりが生まれた。そう言っていただける方を、一人でも多く増やしていきたい。ワークスペースの存在が、仕事の中心に欠かせないと思っていただける会社へ。岡田匡の挑戦は、まだ続いている。
株式会社ワークスペース 代表取締役 岡田 匡